私のまだ何も分からない病気の話を聞いて、長男はいつも通りに過ごしている。 もう後少しで22歳になる彼がどんなふうに思っているかは私には分からない。
長女は看護学生で沢山の病気の人を見てきたいるはずなのに、私のことについてはいつもと変わらずに明るくケラケラと笑っていた。 『死』をそばで見守ってきたあなたが何故私のことは全く心配しないの? と聞くと、「だーってどうなるか分からない先のことをごちゃごちゃいっても始まらないし、ママは肺がんだったら肺取って、乳がんだったらオッパイ取って、そしたらまた生きていくから」と言った。先のことを心配しても仕方がないのは理解していたが、なんの根拠もなく癌かもしれない私に『生きる』と言う言葉を伝える彼女の根拠? 考え方? とにかく私には理解できなかったので「なんで私が生きるって言い切れるのよ!!」と言い返した。 そしたら一言また明るく笑いながら「だーってママ図太いもん」と言った。
その一言で恐怖と不安でガチガチになっていた私の気持ちがハラハラ〜とほぐれ、ガチガチだった肩から力が抜けた。 今まで強くて逞しい娘だとは思っていたけど、その根本にどんなことでも物事の本心を捉え、悪いことでも明るく前向きな方向を見つけていくことができる人なんだと思った。
彼女と話をしたら、今の普通が変化して違う状態になっても、その時はまたその時にできる状態に合わせてその瞬間の普通幸せだな〜 と感じていけばいいんだと思った。
そして次男。 我が家で一番優しくて感受性が強い彼は、私がまた病気かもしれないと聞きおかしくなった。 あれだけ心を躍らせていた大学にも行かないと言い出した。
長い時間をかけて色々な話を私が一方的にした。 彼はめんどくさそうに、私とは目も合わせずに、でもその場からは立ち去らずに、ずっと私の話を聞いていた。
時々彼の口から出てくる言葉は「いじめられて、でも新しい場所に言ったら自分が変われるんじゃないかと思っていた。 でも俺はクズだから何も変わらない。 大学に行ってもどうせ行かれなくなって金の無駄になる。」そして「こんな俺は死ぬから」 とぽつりぽつりと話してきた。 そんな彼の様子をずっと見ていて私は一生懸命彼が本当はどう思っているのかを感じようとしていた。 そして私が感じたことは一つ。 私に対して何か言いたい事がある!! それしかないと思った。
「カーチャンに言いたい事があるなら、悪口でもクソババーでもなんでもいいから君が言いたいことをはっきり言ってほしい」とお願いした。
しばらくしてようやく子供のように泣きながら、「私が死んだら、家に帰ってきた時に会えないのが嫌だし、相談したい事があっても相談できなくなるし、これから一緒にもっと楽しいこともしたい」と言った。
全部聞き終わって一つずつ彼に答えていった。「はやちゃんが家に帰ってきたときに生きていたら、話ができるうちはおかえりって言うから、もし話ができなくなってもそばに来てくれたらおかえりって目で伝えるから、だからひどい匂いになってもそばに来てね」「まだ何も分からないけど、もし私が死んだらいつでもそばで見守ってあげることはできない、でも一緒に過ごした私との事全部がハヤの中に残っているでしょ」「そして相談したい事ができたら一緒に過ごしたこと、話をしたこと、感じたことを思い出して自分で考えてみて」「この先の楽しい事は宮古島にまた行くこともだけど、元気に過ごしている普通の毎日が幸せだよ」「一緒に買い物行ったり、マックを食べたり、そうしている普通の毎日がとても大切」と伝えた。
まだ何もわかっていないのこんな話をするのは変だと思う。 でも私と次男いとってで何故かとても大切な時間だった。
最後に「大学行きたいよね? 君のやりたいことを実現したいよね?」と聞いた。 彼は私に向かってしっかりと力強く頷いた。
彼がやりたいことは、『私が私を大切に思って愛しているよ、私はあなたを大切に思って愛しているよ。』と伝えること。 それを彼が作った『作品』で人に伝えていくこと。
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